不安や恐れから心を守る防衛機制

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私たち人間には、不安や恐怖から自分を守る心の働きを持っています。人間の本能に類するもので、心理学者ジンク・フロイトは防衛機制と名付けました。私たちの心を占める正しい道を探る自我(エゴ)がわがままな本能的欲求であるイド(無意識)に対して抵抗する手段と言われています。この防衛機制によって、私たちは心が壊れてしまうような危機的な状況から自分自身を救うことができるのです。

防衛機制は心がSOSを発した時に瞬時の反応でかかる心のブレーキです。これが機能しない場合心が病む、壊れるということが起こります。でも、長い時間にわたって機能し続ける場合も心に負担がかかります。防衛機制について、注意して付き合っていく必要があるのです。

次の9つの防衛規制があります。

抑圧

自分自身で受け入れがたい考えや感情、記憶を否定したり、なかったことにしようとすることです。防衛機制の代表格であり、防衛機制そのものと言われるものです。すべの防衛機制が、この抑圧と関連しています。

合理化
何か正当性のある理由をつけて自分を守ったり、責任転嫁をすること。たとえば仕事で、自分の失敗を
部下に押し付けたり、上司に言い訳をするといったことが、これに当たります。合理化を繰り返す心は「自己卑下」「自己嫌悪」といった自己否定感情を増幅していきます。

同一視

他人が持つ優れた能力を自分も持っていると思い込み、同じような行動に出ること。スターに憧れるあまり、自分と同一化するなどという場合がそう。また、同一視することで、本来自分が持っているコンプレックスを解消しようとする心の動きもあります。これが講じるとコンプレックスを隠し続けるための極端な行動に走る危険性があります。

投影

自分が心の中に抑圧している考え方や感情を、他者が持っているように感じてしまうこと。嫌な上司に対して嫌悪感を感じ、相手の中にも自分に対する嫌悪感があるに違いないと思い込む。これが投影です。無意識で行われてしまうので、心の負担になっていきます。

反動形成

抑圧している感情とは逆の行動をとること。嫌悪感を持つ上司に対して、親しく話しかけるなど反対の態度を取り、自分を偽る場合がこれに当たります。無意識の状態なので、上司の悪口を誰かが言うと、その人を攻撃するという行動に出てしまいます。

逃避

心に葛藤を引き起こす問題から逃げてしまうこと。嫌悪感を抱いた上司から逃げるために、会社を辞めるなどがこれに当たります。

置き換え

不安や反感といった感情を、それを引き起こしている対象に直接ぶつけるのでなく、似たような対象者に対してぶつけること。原因を直接解決することにならないので、不満が解消されず、心の葛藤が継続することになります。

補償

あるものに対する劣等感を補うために、他のことで優越するような行動に出ること。勉強ができないという劣等感を、何かスポーツの試合で優勝するなどのエネルギーに向けていくといったことが上げられます。結局、不安から逃れることになるので、心の葛藤は解決しません。

昇華

叶えられない欲求や解決しない問題を、芸術やスポーツなどの高次元の世界で認められることで解消すること。一見理想的に感じられますが、乗り越える山が高すぎることから挫折や病的な状態を招きやすいとされています。

神経症は、こうした防衛機制の過剰な働きによって起こる心の病です。

健全な心はどういう状態なのか。自分自身で調整するために覚えておくといいでしょう。エゴとイド、自我と無意識のありようが、私たちの人生を握る鍵と言えるでしょう。